2010年07月11日

少女塾 文月

梅雨も終はりに近い蒸し暑い日
爽やかな風を運ぶかのやうにをとめ達は少女塾の扉を開ける。
和やかに談笑した後、気持ちはすぐ切り替はり
人形の世界へと入つていく。

一日じつくりと人形制作へ向ふ貴重な時間。
この日ばかりは日常の全てを忘れ自分さえも忘れて集中する。
人形制作は、短い時間のお稽古では余り進まず実感も得られ難い。
叉、月に何度も通ふのは以外とエネルギーを要する。

月に一度と云ふのは程良く気持ちが持続でき
一日かけて目に見えて形が出来上がつていくのは
楽しみなのではないかと思ふ。
何故なら私も塾生達の作品が出来上がつていく事に
大きな喜びを感じてゐるからである。

既に出来上がつた人形が待ち遠しさうに
ブランコの完成を待つてゐる。
今回は普段の人形制作にはない様々な事を経験した。
初めて扱ふ素材もあつたかも知れない。
花を染めたり、ワイヤーを曲げたり繋げたり、絵を描いたり…。
ほんの些細な事も熟考し、気持ちを注ぎ込んで制作した。
その様子をずっと見てゐると自分の作品と同様に愛しさを覚える。

完成の時は少女塾が薔薇色に包まれる。
をとめ達の胸に花が咲く芳しいひとゝきだ。

posted by 市川こずえ at 11:55| 少女塾

2010年06月14日

花薫るひとゝき

初夏のやうな爽やかな日差しに満ちあふれ
少女塾の時は静かに過ぎていく。
仄かに花の香漂ふやうなひとゝきに身を委ね
自分の制作と向き合ふをとめ達。

制作の事、作品に対する想ひとその世界
様々な事に想ひを巡らせながら制作を進めていく。
習ひに来てゐるのだから、雑念に覆はれたまま
何気なく手を動かしていれば良いのではない。
大事なのは、型紙を貰ひ作り方を聞く事ではない。

制作の順序やコツ、人形制作の想ひや思想、
時には芸術や文学の話等、様々な事を伝へていくが、
それを受け止め、自分の夢の世界を広げていくのは
塾生自身である。

自分の夢の世界にこゝろを羽搏かせ
制作に没頭する満ち足りた時間。
きらきらと輝く小さな思ひ出を閉じ込めるやうに
一つ叉一つと作品が出来上がつていくのである。

posted by 市川こずえ at 14:28| 少女塾

2010年05月10日

やはらかき日差しに包まれて

爽やかな初夏の風に誘はれて
煌めく光もさゞなみのやうに
をとめ達の胸に降り注がん

色とりどりの花とたはぶれ 身もかろく
花園翔るをとめの如く
今月も少女塾の一日は過ぎてゆく

人形制作に於いて色や形は重要である。
重要ではあるが、色や形そのものが人形美、人形の魅力ではない。
大事なのは、何を想い描き、何を夢見て
その色彩、その形を選ぶかである。
観る者が気にも留めないやうな細かい部分に至つても
しつかりとしたイメージを持ち、気持ちを注ぐ事が
制作する人形への愛情である。





posted by 市川こずえ at 21:09| 少女塾

2010年03月27日

紀貫之 其の五

 青柳の糸絶えず、松の葉のちり失せずして、まさきのかづら長く伝はり、
鳥のあと久しくとゞまれらば、歌のさまを知り、ことの心を得たらん人は、
大空の月を見るがごとくに、いにしへを仰ぎて今を恋ひざらめかも。
                  …「古今和歌集」序文より(結びの一文)

 古今和歌集が、絶えず、また散り失せず、
 長く伝はり、久しく世に存しているなら
 歌の本質を知り、この勅撰和歌集が編纂された真意を理解する人は、
 大空の月を見るやうに昔を振り返り、
 この延喜の聖代を恋しがらずにはゐられないであらう。

紀貫之等に勅撰和歌集作成の命が下つたのは、905(延喜5)年の事。
それから千年以上経ち、今私の手元にこの古今和歌集が有る事に
大いなる浪漫を感ぜずにはゐられない。

当時は漢詩文隆盛だつた。他国の言葉を使ふといふ事は
他国の思想に染まるといふ事ではないだらうか。

やまと歌には日本人のこゝろが詠はれてゐる。
それは長い年月をかけて大事にされてきたものである。
今の時代、日本人のこゝろとは何かと問ふ時が来たのかも知れない。

夜空を仰ぎ月を眺める度にこの延喜の聖代を、貫之等の事を想ふ。
月は今も昔も変はらず、静かにこの御代を照らしてゐる。





posted by 市川こずえ at 12:23| 少女塾国語

2010年03月15日

春かをりて

風は少し冷たくも、春の訪れ晴れやかに
今月も少女塾の扉は開く。

何ケ月もかけて、少しづゝ作つてきた人形が段々と出来上がつてくる。
手足を作り、頭と胴体を作り、顔を描き…、
これまでの道程を振り返ると感慨深いものがある。
あともう少しで完成といふ時は、皆無言で手を動かしてゐる。
逸る心を抑え、唯無心で一筋の光に向つて進んでいく。

人には感情(又はこゝろ)といふものが存在する。
それは小さな風となつて、その人の周りをいつも取り巻き
嬉しい時には喜びに包まれる。
その輝きに包まれる時初めて人形はこの世に生まれ出づる。

この日の少女塾は、花薫る暖かな春の喜びに満ちてゐた。





posted by 市川こずえ at 22:55| 少女塾